韓国の駐車場で、車のフロントガラスの下に電話番号を見つけたことはありませんか?小さなプレートに、数字がずらり。車の持ち主が、わざわざ外から見えるように置いているんです。
主な理由は、車を動かす必要があるときに、持ち主へ連絡できるようにするため。特に「二重駐車」と深く関係しています。日本の車庫証明との違いや、ソウルの駐車場事情を知ると、この習慣の背景が見えてきます。
初めてダッシュボードの番号プレートを見たときは、「ここに自分の電話番号を置くんだ」と驚きました。最初は車の持ち主がずいぶんオープンだなと思ったけれど、車を動かしてもらうための連絡先だと知って納得。小さなプレートをきっかけに、駐車場にも人のやりとりがあることに気づいたんです。

あのプレートは、車の持ち主への連絡先
韓国語では「주차번호판(チュチャボノパン)」などと呼ばれる、駐車用の電話番号プレート。車の外側に付いているナンバープレートとは別のものです。
ダッシュボードの上に置いたり、フロントガラスの内側に付けたりして、外から連絡先が見えるようにします。数字を組み替えるタイプもあれば、紙に書いて置く場合も。
連絡の内容は「車を移動してほしい」のほか、マンションへの訪問車両の確認など。
大事なのは、車から離れていても連絡がつくこと。プレートがあっても電話に出られなければ、出たい人はその場で待つことになります。飾りとして置くだけでは、仕事をしてくれません。
日本の「車庫証明」と、韓国の違い
日本には、車を持つときに普段の置き場所を確保する仕組みがあります。一般的な乗用車を新規登録するときなどに必要なのが、「車庫証明」。道路以外の保管場所を用意し、使えることを証明します。軽自動車は対象地域で届出をするなど、手続きには車種や地域による違いがあります。
ただ、車庫証明があるからといって、日本の違法駐車がゼロになるわけではありません。日本でも違法駐車の取締りは行われています。普段の置き場所を確保することと、外出先で正しく停めることは、どちらも必要なんです。
一方、韓国では、一般の自家用車に日本のような車庫証明を全国的に求める制度はありません。済州島には対象車両の車庫を証明する制度がありますが、ソウルで普通の自家用車を買うときに、同じ手続きをするわけではないんです。
ソウルでは「家の近くの一台分」が足りない
ソウルのように人や住宅が密集する街では、特に古い住宅地で駐車スペースの不足が問題になります。車が増えても、狭い土地に建つ家や細い路地は、すぐには広がりません。
昔に建てられた多世帯住宅には、住む世帯の数に対して、車を置ける場所がほとんどないものもあります。そこへ住む人や車が増えると、道路や駐車場の整備が追いつかない。新しく駐車場を造ろうにも、土地の確保や費用が壁になるんです。
困るのは「家の近くで、帰宅したときに使える一台分」が見つからないこと。少し離れた施設に空きがあっても、毎日の置き場所として使えなければ、その住宅地の困りごとは残ります。
こうした住宅地では、路上の違法駐車や、集合住宅の二重駐車が問題になることがあります。韓国の「アパート」は、日本でいうマンションに近い集合住宅。古い団地などでも、駐車スペースが足りず、車の置き場所に困るところがあるんです。
その場にもう一台置こうとして行われるのが「이중주차(イジュンジュチャ)」、二重駐車。白線の枠に停まっている車の前へ、別の車を横向きに停める、といった形です。

これならその場にはもう一台置けるけれど、奥の車が出ようとすると、手前の車が壁になる。そこで連絡先が必要になるんです。
私は、車を持つときの制度の違いに、人が集まる街と、古い住宅地の駐車スペース不足が重なって、「必要なら電話で呼んでもらう」という工夫が根づいてきたのだと思います。番号プレートは、その調整を支える小さな道具なんですね。
駐車区画が十分な場所もあり、韓国の駐車場がどこも二重駐車をしているわけではありません。電話番号プレートは普通に停めている車にもあるので、番号があるだけで迷惑駐車とは決めつけられません。
「車を出してください」が電話一本で届く
たとえば、朝、仕事へ行こうとしたら、自分の車の前に別の車が。そんなときはフロントガラスの番号を見て連絡し、どの車の前にいるのかを伝えて、移動をお願いします。

持ち主が電話に出て、すぐ戻ってきてくれれば、やりとりは短く済みます。「どこへ連絡したらいいの?」と迷ったときに、目の前の番号が手がかりになるわけです。
私も出かける前、前に停まった車の持ち主へ電話をして、戻ってくるのを待ったことがあります。連絡先が見えたときはほっとしたけれど、時計を見ながら待つ数分は、普段の数分より長く感じました。電話一本で話が通じるのは便利。でも「車を出す」予定に「持ち主を待つ」が加わると、余裕のない朝にはこたえます。
電話がつながらない、番号が見えない、すぐには動かせない。そんなときは、警備員や管理事務所、駐車場の係員に相談する方法もあります。連絡先は助けになりますが、必ずすぐ解決する魔法ではありません。
番号を置けば、どこに停めてもいい?
ここは、はっきり「いいえ」です。電話番号は、必要なときに連絡を受けるためのもの。駐車禁止の場所や、消防車の通り道をふさいでよい理由にはなりません。現地の表示や施設のルールを守るのが前提です。
「空いていないから仕方ない」という事情があっても、出られない人の予定は待ってくれない。私は、連絡できるようにする配慮と、そもそも出入りをふさがない配慮は、セットであってほしいと思います。
便利だけど、電話番号を見せるのは気になる
便利さの一方で、「知らない人にも自分の番号が見えるの?」という不安は、自然なもの。韓国にも、個人の番号をそのまま公開したくない人はいます。

対策には、番号を隠せるプレートや、普段の携帯番号を見せずに連絡を受けられる「안심번호(アンシムボノ)」という専用番号、QRコードを使うサービスなどがあります。利用条件や連絡方法はサービスごとに違います。
カバーで隠すタイプなら、表示が必要な場面で見えるようにすることも忘れずに。番号を伏せたままでは、そこから連絡できなくなります。
番号を外から見せる便利さは分かっても、自分の携帯番号をずっと表示しておくことには、少し抵抗を感じました。次にプレートを選ぶときは、必要な連絡を受け取れて、個人の番号の公開は抑えられるものを探すつもりです。停めた後の連絡方法まで分かりやすく案内してもらえると、使う側も安心できると思います。
韓国旅行で見かけたら、ここをチェック
街歩き中にプレートを見つけたら、「この車、持ち主に連絡できるようにしてあるんだ」と眺めるだけでも、駐車場の景色が変わります。
- 写真をSNSに載せるときは、電話番号や車のナンバーが読めないようにする。
- レンタカーを使うなら、連絡先の表示方法と、実際に電話を受けられるかを借りる店で確認する。
- 車が出せないときは、自分でほかの車を動かそうとせず、持ち主や係員に相談する。
旅行中なら、電話番号だけ用意しても、着信に気づけない設定では困ります。プレートをまねするより、「必要な連絡を受け取れるか」を先に確認したいですね。
駐車場で見かける、やさしい韓国語
주차(チュチャ):駐車
전화(チョナ):電話
연락(ヨルラク):連絡
번호(ボノ):番号
小さな番号から、人のやりとりが見える
韓国の車に置かれた電話番号は、持ち主と、車を動かしてほしい人をつなぐ連絡先。車の保管場所をめぐる制度の違いと、密集した住宅地の駐車場不足を知ると、この小さな道具がぐっと生活感のあるものに見えてきます。
私は、この小さな道具から人の生活が見えてくるのが好き。ただ、いちばんうれしいのは、誰にも電話せず、すっと車を出せる駐車場。連絡の工夫も便利だけれど、待たせない余裕まであったら、もっと気持ちいいですよね。