韓国の地下鉄、ピンクの席は誰のため?妊婦優先席の意味とマナー

青い一般座席の端にあるピンクの妊婦配慮席と案内マーク

ソウルの地下鉄で、青い座席の並びにひとつだけピンク。しかも、なかなか目を引くピンク。

「えっ、ここだけプリンセス専用? 座ったらティアラも付いてくる?」なんて想像したくなるけれど、この席には、かわいさ以上に大切な役割があります。

正体は、妊娠中の人のための「임산부 배려석(イムサンブ ペリョソク)」。日本語なら、妊婦優先席・妊婦配慮席に近い意味です。ソウルでは、必要な人がすぐ座れるよう、空けておく配慮が呼びかけられています。

青い一般座席の端にあるピンクの妊婦配慮席と案内マーク
ピンクは、必要な人のための席だと気づくきっかけ。

ピンクは「ここに気づいて」のサイン

初めてこの席を見たとき、私は文字を読むより先に、ピンクの色で足を止めました。「ここだけ違うんだな」と気づいて、マークを確かめたんです。表示を全部読まなくても、意味を調べるきっかけになる。この思い切った色の違いは、韓国語に慣れていない人にも伝わりやすくて、いいなと思います。

ソウル市が2015年に発表したデザイン改善も、まさに「ひと目で分かるように」が狙いでした。それまでの壁のマークは、誰かが座ると隠れてしまい、気づかれにくかったそう。そこで座席や背もたれなどにピンクを使い、存在が伝わりやすい形にしたのです。

つまり、ピンクなのは「かわいい女性のため」という意味ではありません。妊娠中の人を気づかい、席を譲りやすくするための色。私には、車内から届く小さな「ここ、必要な人のために空けておこうね」に見えます。

デザインの背景は、ソウル市の紹介でも確認できます。

お腹が目立たなくても、必要な席

この席を考えるときに、いちばん覚えておきたいのが「妊娠は、見た目だけでは分からない」ということ。

妊娠初期はお腹が目立たなくても、つわりや疲れなどで、立って移動するのがつらいことがあります。ソウル市も、外見から分かりにくい初期の妊婦が利用できるよう、配慮を呼びかけています。

だから、座っている人を見て「お腹が大きくないのに?」と判断するのは避けたいところ。ピンクの席は、見た目のチェックを通過した人だけが座る場所ではありません。

韓国には、妊娠中であることを周囲に知らせる、バッグに付けるバッジもあります。日本のマタニティマークを思い浮かべると、役割が分かりやすいはず。

ベージュのバッグに付けた「임산부 먼저」と書かれたピンクの妊婦配慮バッジのイメージ
バッグのバッジも、妊娠中であることを知らせるサイン。

ただし、バッジが見えないから妊婦ではない、と決めつけるのも早いですよね。バッグの向きひとつで見えなくなることもあるし、そもそも全員が同じように付けているとは限りません。

私も、車内で知らない人に声をかけるとき、言うタイミングを探してためらったことがあります。短い用件でもそうだったので、具合が悪い中で「席を譲ってください」と伝える負担は、小さくないと思います。「必要なら言ってね」より、何も説明しなくても座れる場所があるほうが、気持ちが楽。お願いする人の勇気だけに頼らない仕組みが好きです。

日本の優先席と、何が違う?

日本でも、妊娠中の人は優先席を必要とする人に含まれます。たとえば東京メトロは、高齢の人、体の不自由な人、乳幼児連れの人などとともに、妊娠中の人へ席を譲るよう案内しています。

ソウルで目を引くのは、そうした優先席とは別に、妊娠中の人への配慮をピンクの座席で分かりやすく示しているところ。「妊婦さんも優先ですよ」という案内が、ひとつの席の色として見えるんです。

どちらの国がやさしいか、という勝負ではなく、同じ気づかいをどう伝えるかの違い。私は、韓国語が読めない人にも「何か意味がある」と気づかせる、この分かりやすさに惹かれます。

席の位置や表示は路線・車両によって違うので、探すときは色だけでなく、妊婦のマークや案内も一緒に確認してみてください。

空いていたら座っていい?旅行中はこう考えたい

「周りに妊婦さんが見当たらないし、今だけなら……?」と迷うかもしれません。でも、見た目では分からない人がいるからこそ、空席にしておく意味があります。

ソウル旅行では、ピンクの妊婦配慮席は空けておき、一般の席を選ぶのが分かりやすい行動です。歩き回った日の足は、心の中で「本日の営業は終了しました」と言いがちだけれど、休憩はカフェで確保する作戦にしたい。

「임산부 배려석」の案内表示と、荷物の置かれていない空いたピンクの座席
空けておくことで、必要な人がすぐに座れます。
  • 乗ったら、座る前に座席の色とマークをひと目チェック。
  • 妊婦配慮席には、自分も荷物も置かず、必要な人が使えるように。
  • 気づかず座ったときは、分かった時点で席を空ければ大丈夫。
  • 一般の席でも、席を必要としている人に気づいたら、無理のない範囲で譲る。

もちろん、自分自身が妊娠中なら、遠慮しすぎず利用していい席です。お腹が大きくなるまで待つ必要はありません。

歩き回って疲れた日、空いている席を見て、つい腰を下ろしかけたことがありました。でもピンクのマークに気づいて、一般の席へ。あれからは、座る前に色と表示をひと呼吸で確かめるようにしています。ほかの乗客を見た目だけで責めたり、写真を撮って判断したりはせず、自分ができる配慮を選びたいです。

地下鉄で見かける、やさしい韓国語

長い表示を丸ごと覚えなくても、この短い言葉が分かると、車内の案内が少し身近になります。

  • 임산부(イムサンブ)— 妊婦・妊娠中の人
  • 배려(ペリョ)— 配慮・気づかい
  • 자리(チャリ)— 席・場所
  • 양보(ヤンボ)— 譲ること
  • 먼저(モンジョ)— 先に・まず

バッジなどにある「임산부 먼저」は、妊娠中の人を先に、という気持ちを伝える言葉。短いけれど、ちゃんとやさしい。私はこういう、日常の中で出会える韓国語が好きです。

かわいいピンクの、その先にあるもの

最初は「プリンセス席?」と目を留めるピンク。でも意味を知ると、かわいい色が「見えない大変さにも気づこう」というサインに変わります。

私は、誰かが勇気を出してお願いする前に、座れる場所が用意されているほうが好きです。次に韓国の地下鉄でピンクの席を見つけたら、色だけでなく、その席が待っている人のことも思い出してもらえたらうれしいです。

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