アジア大会で韓国のバスが来なかった理由は?日韓決勝と相次ぐ運営問題

愛知・名古屋アジア大会の男子バスケットボール決勝で勝利を喜ぶ韓国代表

日韓の金メダル決定戦。その日の朝、韓国の男子バスケットボール代表を迎えに来るはずのバスが、来ませんでした。

2026年9月20日の愛知・名古屋アジア大会で起きた送迎トラブルです。予定していた練習ができなかったことは報じられています。ただし、なぜ配車されなかったのか、意図的な妨害だったのかは別の問題。今回確認した報道では、故意を裏付ける証拠は示されていません。

それでも韓国で大きな話題になったのは、少し前から国歌の取り違えや歓迎行事をめぐる問題が重なっていたから。試合だけ見ていると分かりにくい、その背景を整理してみます。

愛知・名古屋アジア大会の男子バスケットボール決勝で勝利を喜ぶ韓国代表
男子バスケットボール決勝で勝利を喜ぶ韓国代表(2026年9月20日)。写真:聯合ニュース/掲載:ハンギョレ新聞。 出典記事

① なぜ、日韓決勝の日にバスが来なかった?

韓国代表は決勝当日の午前、シュート練習のために移動する予定でした。ところが、午前10時に宿泊先へ来るはずの車両が到着せず、練習を取りやめることになりました。

大韓体育会は、大会組織委員会とアジア・オリンピック評議会(OCA)に抗議する方針を示しました。Reutersの取材に対し、組織委員会は個別の出来事へのコメントを控え、競技に支障が出ないよう輸送サービスを手配していると説明しています。

私も、時間を決めた待ち合わせで相手を待っているとき、時計を見るたびに落ち着かなくなったことがあります。普段の予定でもそうだったので、決勝前に練習へ向かえなかったという報道には、胸がざわつきました。選手が競技以外の段取りを気にせず準備できることも、大会を支える大事な仕事だと思います。

しかも対戦相手は開催国の日本。「どうして、よりによって今日?」と疑問を持つ人が出るのも想像できます。

ただ、タイミングが重なったことだけで、誰かの意図まで決めつけることはできません。練習の機会が失われたという問題と、故意だったという主張は分けて考える必要があります。

② 韓国の試合で、北朝鮮の国歌が流れた

その2日前、9月18日の男子ホッケー韓国対バングラデシュ戦でも、別のトラブルが起きました。試合前の国歌演奏で、韓国の「愛国歌」ではなく北朝鮮の国歌が流れたのです。

韓国対バングラデシュの男子ホッケーの試合前に整列する選手たち
試合前に整列する韓国とバングラデシュの選手たち(2026年9月18日)。写真提供:大韓ホッケー協会・聯合ニュース/掲載:毎日経済。 出典記事

組織委員会が大韓体育会に正式に謝罪したことも、翌19日に報じられています。

国歌は、選手が自分の国を代表して立っていることを実感する場面の一つ。韓国と北朝鮮の関係を考えれば、韓国側がとりわけ敏感に受け止める背景もあります。

とはいえ、原因を確認しないまま「担当者が音源を選び間違えただけ」と片づけるのも、「わざとだった」と断定するのも早計です。どう取り違え、確認の段階でなぜ止められなかったのか。必要なのは、そこへの説明でしょう。

③ 韓国だけが困っていたわけではない

ここで視野を少し広げると、大会の移動や宿泊をめぐる不満は、韓国以外からも出ています。

選手宿泊施設として使われるクルーズ船コスタ・セレーナ
選手らの宿泊施設として使われるコスタ・セレーナ(2026年9月15日)。写真:イム・ファヨン/聯合ニュース。 出典記事

中国選手団の一部が、登録情報の不具合により空港周辺で長時間待たされたとの報道があります。タイのセパタクロー代表についても、部屋の割り当てが確認できず、クルーズ船のロビーで待機・仮眠したと報じられました。

今大会では、大規模な専用選手村を新設する代わりに、ホテル、クルーズ船、仮設の宿泊施設を活用しています。参加する選手・関係者の想定も約1万5,000人から1万7,000人超へと膨らみ、開幕前から宿泊の確保が課題になっていました。

もっとも、参加人数の増加が今回のバス未到着の直接原因だったと確認されたわけではありません。宿泊、登録、送迎はつながっていますが、一つひとつの原因を調べる必要があります。

複数の国が困っている以上、「韓国だけを狙ったのか」という問いに加え、大会全体の受け入れ体制がきちんと機能していたのかを見ておきたいところです。他国にも問題があったからといって、韓国代表の被った不利益が小さくなるわけでもありません。

④ 歓迎行事の豊臣秀吉は、なぜ問題になった?

時系列を少し戻すと、9月15日には、選手らの宿泊先となるクルーズ船「コスタ・セレーナ」の入港記念行事がありました。登場した武将役の出演者の中に、豊臣秀吉がいたことが韓国で問題になりました。

クルーズ船の入港記念行事に登場した豊臣秀吉などの武将役の出演者
クルーズ船の入港記念行事に登場した武将役の出演者(2026年9月15日)。写真:AFP・聯合ニュース/掲載:韓国日報。 出典記事

愛知・名古屋では、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康は地域ゆかりの三英傑。地元の歴史や観光を紹介する場で取り上げられる人物です。

一方、韓国では秀吉は、1592年に始まる朝鮮侵攻を命じた人物として強く記憶されています。日本でいう文禄・慶長の役にあたる戦争です。

同じ人物でも、地元を紹介する側には「郷土の歴史」、迎えられる側には「侵略の記憶」。歓迎のつもりの演出が、歓迎されていると感じられない場面になってしまったわけです。

大韓体育会はOCAと組織委員会に抗議。組織委員会は、地域の文化・観光を紹介する趣旨であり、特定の歴史的人物を支持したり、歴史的なメッセージを伝えたりする意図はなかったと説明しました。また、受け手によって解釈が異なることを認識し、今後の内容に注意するとしています。

東京五輪の「李舜臣を連想させる横断幕」との比較も

この問題で再び話題になったのが、2021年に開催された東京五輪です。韓国選手団は、李舜臣の言葉をもとにした応援メッセージを選手村に掲げ、IOCの要請を受けて撤去しました。

今回、韓国の徐敬徳(ソ・ギョンドク)教授は、この出来事と比較して秀吉の登場を批判しました。

ただし、選手団が掲げた横断幕と、関連行事での出演者の演出では、場面も判断の枠組みも異なります。そのまま同じ規則の問題とはいえません。

それでも、多くの国が集まる場では、開催地で親しまれる表現が、参加者全員に同じ意味で伝わるわけではない。その難しさが見える出来事でした。

一度のミスより、重なった出来事が不信感につながる

韓国のサッカー代表にも送迎の遅れや行き先の取り違えが報じられていました。そこに、15日の歓迎行事、18日の国歌の取り違え、20日のバス未到着が重なりました。

私も最初は一つの送迎ミスの記事として読んでいました。でも、ほかの出来事を日付順に並べると、「また?」と感じる気持ちが分かってきたんです。一つずつ読むと見えにくい、積み重なった不安がありました。だからこそ、気持ちが強く動いたときほど、起きたことと、まだ分かっていない原因を分けて見たいと思いました。

一方で、不信感が生まれたことと、その疑いが事実だということは違います。今後注目したいのは、原因の説明と、同じ問題を繰り返さないための具体的な対応です。

そんな中で行われた男子バスケットボール決勝は、韓国が日本に67–57で勝利。2014年の仁川大会以来、12年ぶりの金メダルを獲得しました。

勝ったから送迎の問題がなくなるわけではありませんし、勝敗から妨害の有無が分かるわけでもありません。選手の活躍をたたえることと、大会運営を検証すること。その両方が大切なのだと思います。

最後に、個人的に思うこと

私は、決勝の結果を読んでうれしかった一方、先に思い出すのが送迎トラブルになっていたことが残念でした。選手のプレーを楽しむはずの時間に、運営のニュースばかり追っていたんです。次に大会の記事を読むときは、結果や好プレーにもちゃんと目を向けたい。そのためにも、移動や宿泊の問題は、原因と改善策まで分かる形で説明してほしいと思います。

スポーツ大会の主役は運営上のトラブルではなく、自分の限界に挑む選手たちのはずです。何年もかけて磨いた技術や、一瞬の判断から生まれる素晴らしいプレーが、もっと大きく記憶される大会であってほしいと思います。

どれだけ素晴らしい映画でも、舞台裏のトラブルばかりが話題になれば、本当に大切な場面はかすんでしまいます。

今回の大会も、いつか振り返ったとき、「問題の多かった大会」ではなく、「あの選手のプレーは本当にすごかった」と語られる大会になってほしいです。

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