2026年9月27日、愛知県の豊橋市民球場で行われたアジア大会の野球決勝。韓国は日本に3―1で勝ち、金メダルを獲得した。韓国人の私ももちろんうれしい。でも試合後、なぜか頭に残ったのは日本の選手たちだった。
日本は7回、佐藤勇基選手の適時打で同点に追いついた。韓国は8回に2点を奪って勝ち越したけれど、終盤まで接戦だった。日本の選手は普段どこで、どんな野球をしているのだろう。試合をきっかけに、両国の代表のつくり方が気になった。

韓国はプロ、日本はなぜ社会人野球の選手?
KBOが公表した韓国代表24人は、全員がKBO球団の所属選手。一方、侍ジャパンが公表した日本代表24人は社会人代表で、トヨタ自動車、NTT西日本、JR東海、王子などでプレーする選手が並ぶ。今回の決勝は、韓国のプロ選手と日本の社会人野球の選手が向き合った試合だった。
アジア大会でプロ選手が出場できないわけではない。日本にはNPBのトップチームとは別に社会人代表があり、今回もその枠組みで選手を選んだ。日本野球連盟の監督インタビューでは、成績や合宿での姿勢を見て選考したと説明している。大会がNPBのシーズン中だったことも背景として考えられるが、それだけが理由だとする公式説明は確認できなかった。
もちろん「韓国は勝利、日本は育成」と分け切るのも違う。日本代表も金メダルを目指していたし、韓国の若いプロにとっても国際経験は大切だ。
「社会人野球」は週末の趣味の野球ではない
日本の社会人野球には、企業などの会社チームとクラブチームがある。企業チームの選手は会社に所属し、競技を続ける。仕事と練習の配分や支援の形はチームごとに違うけれど、高いレベルの硬式野球に打ち込む選手たちだ。
私も初めは、「社会人」と聞いて仕事の合間の野球を思い浮かべた。でも日本代表のプレーを見て、その受け取り方では足りないと感じ、選手の所属先を調べた。社会人チームからNPBのドラフトで指名される道もある。プロではないという言葉だけで、競技の強さや真剣さを決めてはいけない。試合を見て、自分の先入観に気づかされた。

佐藤勇基選手の同点打を伝える決勝写真を見る|侍ジャパン公式 ↗
日本野球の本当の厚みは、プロの下にもある
高校野球と甲子園は、日本の野球文化の大きな入り口。でも甲子園からすぐプロに進む選手だけが、野球を続けるわけではない。大学で磨き、卒業後に企業やクラブのチームへ進む道もある。高校→大学→社会人→プロは一つのルートで、高校や大学から直接プロへ進むルートもある。
選手層の厚さは数字にも表れる。日本高等学校野球連盟の2026年調査では硬式野球の加盟校が3,746校、部員が124,116人。全日本大学野球連盟の2026年5月集計では加盟大学369校、部員28,166人。甲子園の前には地域大会があり、大学にも各地のリーグがある。大舞台に届かなかった選手にも、次の勝負の場所が残る。

社会人野球の象徴が都市対抗野球大会だ。1927年に始まった大会で、都市を代表するチームが予選を勝ち抜き、東京ドームの本大会を目指す。2026年の本大会は32チーム。予選で敗れたチームの選手を補強できる独特の制度もある。スタンドでは企業や地域の応援団が選手を後押しする。社会人野球日本選手権やクラブ選手権も、続けてきた選手たちの目標になる。
企業チームは何チームあるのだろう。日本野球連盟の公開資料では、2023年8月時点の会社登録は95チームで、その中に専門学校11チームを含む。クラブ登録は249チーム、合計344チーム。2026年現在の確定数としては扱えないけれど、プロの外に多くの受け皿があることは伝わる。
試合後、私は選手が今のチームへ進む前の経歴もたどった。プロ入りだけが終着点ではないと分かると、決勝での粘りも違って見えてきた。グラウンド、地域大会、指導者、企業の支援。どれか一つだけでは選手は続けられない。日本野球連盟も地域との連携や施設の活用、人材育成を課題に挙げている。私は、競技を続ける「次の場所」があることに惹かれた。
韓国野球と比べると、何が違う?
韓国にも高校・大学野球があり、一般部のKBSAリーグや独立チームもある。そしてKBOという大きなプロ市場がある。KBOの2026年発表では10球団に621人が登録され、育成の試合を担うフューチャーズリーグは12チーム体制。韓国にプロ以外の育成がない、という話ではない。

ただ、KBOの二軍は基本的にプロ球団の内側にある。日本の社会人野球のように、企業やクラブが独自の全国大会を目指し、プロに入らなかった選手も高いレベルの公式戦を続けられる仕組みには、韓国が学べる部分があると思う。プロが盛り上がる韓国だからこそ、その一歩手前や外側にも道がもっとあったら、ちょっとうれしい。
9月25日のスーパーラウンドでは日本が韓国に5―0で勝ち、決勝では韓国が3―1で勝った。2試合で「日本の社会人野球は韓国のプロより強い」と順位をつけることはできない。私が気になるのは、プロの外からも国際舞台で競争できる選手が育つ土台のほうだ。

9月25日の日韓戦で投げる樋口新投手の写真を見る|侍ジャパン公式 ↗
金メダルとともに語られる韓国の「兵役」
韓国ではアジア大会の金メダルが、選手のキャリアだけでなく兵役とも結びつく。よく「兵役免除」と言うけれど、法的に兵役義務が丸ごとなくなるわけではない。対象者は手続きを経て芸術・体育要員に編入され、通常の軍服務に代えて競技分野で34か月の義務に従事する。軍事教育の招集があり、期間中には計544時間の公益活動義務もある。
アジア大会では1位入賞が編入基準。ただし、代表の全員に同じ新しい利益が自動的に生じるわけでもない。すでに兵役を終えた選手もいるし、適用はそれぞれの状況と手続きによる。だから私は、制度を説明するときは「兵役免除」の一言だけで済ませたくない。
国を代表して結果を出した選手には正当な報いが必要、という見方がある。一方で、兵役という大きな義務とスポーツの成績を結びつける制度を今も続けるべきか、問い直す見方もある。金メダルに大きな意味が加わるからこそ、代表選考を見る目も熱くなる。ただ、今回の24人が「兵役のため」に選ばれたと断定できる根拠は確認できなかった。
プロ中心の代表が、唯一の答え?
国を代表するなら、最も勝てる選手を選びたい。金メダルと兵役上の利益がかかる韓国では、プロ中心の選考を支持する声にも理由がある。実際に韓国代表は金メダルを取った。その成果は素直に喜びたい。
でも、代表の目的に選手育成も加えられないだろうか。日本のように社会人や大学の選手に国際経験を渡す方法から、学べる点はないだろうか。その場合は勝利を目指す方針やプロ選手の参加機会との調整も必要になる。「最強」を送る大会と、次の選手を育てる大会。どこに重心を置くかは、決めつけずに話し合いたい。
日本野球を見て、韓国野球について考えたこと
試合が終わった後、私は勝った場面だけでなく、日本が7回に追いついた場面も見返した。韓国の金メダルは本当にうれしい。それでも、相手の選手がどこで力をつけてきたのかを知ると、接戦だった理由にもう少し近づけた気がした。次の日韓戦ではスコアだけでなく、出場する選手が普段どんな場所で競技を続けているのかも見ていきたい。
そして韓国人として、もう一つ考えた。私たちはアジア大会の野球を、いつから「金メダルと兵役」というレンズで見ることが増えたのだろう。制度が正しい、間違っていると急いで決めたいわけではない。選手が長く野球を続けられる環境と、代表に何を求めるのか。次に日韓が対戦するときは、スコアの向こうにある選手たちの道も見てみたい。
韓国語を少しだけ
금메달(クムメダル)=金メダル
선수(ソンス)=選手