「同じマンジャロなのに、どうして日本のほうが安いの?」。韓国では、日本での購入と結びつけた「スシジャロ」という呼び方まで話題になっています。寿司とマンジャロを組み合わせた名前なのですが、価格差の主役は食文化ではなく、薬の値段を決める制度です。
日本には、保険診療で使う薬の価格を国が定める仕組みがあり、マンジャロは2026年8月にその薬価が25%下がりました。一方、韓国での肥満治療は保険の対象外。ただし、「日本5,772円」と「韓国27万8,000ウォン」は、そのまま患者さんの支払額を比べた数字ではありません。
最初に価格差の話を読んだとき、私も数字の小さいほうに目が向きました。でも、「それは患者さんが払う金額?」と調べると、比較している値段の種類が違うと分かって、いったん立ち止まったんです。値札の裏に国の仕組みが見えるところが面白い。難しい制度名を少しほぐして、価格差の理由をのぞいてみましょう。

日本のマンジャロには、国が決める「薬価」がある
日本でマンジャロが承認されている用途は、2型糖尿病の治療です。保険診療で薬の費用を計算するときに使う公的な価格を「薬価」と呼び、その基準に収載されています。メーカーが希望する金額を、そのまま保険に請求できる仕組みではないんですね。

新しい薬の薬価は、似た働きをする既存の薬との比較や、比較できる薬がない場合の原価計算など、決められたルールに沿って算定されます。「安くして!」のひと言で決まるわけではなく、まず価格を評価する土台があるということ。
押さえたいのは、薬価は保険で費用を算定するための価格だという点です。メーカーから卸への価格や医療機関の仕入れ値、自由診療の料金表と、全部が同じ数字になるわけではありません。
2026年8月、薬より先に値札がスリムになった
マンジャロ2.5mgの薬価は、1キット(1本)1,924円から1,443円へ。2026年8月1日から、25%引き下げられました。4本で計算すると、薬価に基づく薬剤費は7,696円から5,772円になります。
値札のほうが先に25%スリムになったなんて、価格表の変化がなかなか大胆です。
適用されたのは「持続可能性特例価格調整」。名前は少し長いですが、一定以上に市場が拡大した薬について、公的医療保険の負担も考えて価格を見直す仕組みです。マンジャロは、保険診療のデータに基づく年間販売額と、基準となる販売額に対する伸びが、所定の条件に該当しました。
つまり、「話題だから何となく値下げ」ではなく、制度の条件を満たしたことによる調整。詳しい数字は、厚生労働省の薬価見直し資料で確認できます。

韓国の27万8,000ウォンは「発売当時の供給価格」
韓国では、マンジャロを肥満治療に使う場合は「비급여(ピグビョ)」、つまり健康保険が適用されない扱いです。日本の保険薬価のように患者向けの販売価格が一律に決まるわけではなく、実際の費用は医療機関などによって異なります。
よく引用される2.5mg・4週分の27万8,000ウォンは、2025年8月の韓国発売前に報じられた供給価格です。診療費などを含む全国共通の最終料金でも、2026年10月の最新の相場でもありません。
日本の5,772円は「公的な薬価を4本分足した数字」。韓国の27万8,000ウォンは「発売当時の供給価格」。どちらも価格の背景を知る手がかりですが、数字だけで「何倍お得!」とは言えないんです。
記事を読みながら、私はメモに「日本:薬価」「韓国:発売当時の供給価格」と書き分けました。それだけで、同じところに並んだ数字でも、見ている段階が違うと整理できたんです。値札だけの比較は、カフェの豆の仕入れ値とラテの会計を比べるようなもの。ミルクとお店の仕事が途中で参加していると考えると、私はすっと納得できました。
日本へ行けば、誰でも5,772円で買える?
答えは、そうではありません。日本の公的医療保険への加入や、治療内容が保険の対象かどうかは別の条件です。韓国から旅行に来ただけで、日本の健康保険が使えるわけではありません。
また、日本でマンジャロを美容・ダイエット目的に使うことは、承認された2型糖尿病の治療とは区別する必要があります。自由診療なら、日本の人でも韓国から来た人でも、医療機関が設定した自費の料金が基本になります。国籍だけで決まる話ではないんですね。
実際、薬価改定に合わせて自費料金を下げた日本のクリニックもあります。ただ、薬価が25%下がったからといって、すべての自由診療が同じ割合で安くなるわけではありません。診察料が別か、薬の料金に含まれるかでも、会計は変わります。
韓国で「スシジャロ」が話題になった背景には、こうした日本の自費料金と韓国の購入費用に差が出るケースがあります。私は、呼び名のおもしろさと、薬を使う判断は分けて考えたい派。通院や継続的な診療まで含めて見ないと、安さの意味も変わってしまいます。

じゃあ、リリーはこの価格でも平気なの?
ここ、気になりますよね。でも、公表されている薬価だけを見て「赤字だ」「十分もうかる」と断定することはできません。実際の取引価格や製造費、研究開発費、売れる量などを一緒に見なければ、会社の損益は分からないからです。
しかも、メーカーが喜んで受け入れているわけでもありません。日本イーライリリーは2026年8月3日の声明で、今回の引き下げに懸念を示し、研究開発や製造への長期投資、将来の治療薬へのアクセスに影響し得ると主張しました。
保険制度を長く支えたい側と、新しい薬への投資を続けたい側。値下げの見出しを見たときは負担が軽くなる点に目が向きましたが、メーカーの声明も読むと、価格を下げる話には別の視点があると感じました。必要な治療を受けやすくなることはうれしい。そのうえで、今後も治療の選択肢が続くことまで考えたいです。次に価格の記事を読むときも、安さの数字だけで判断せず、その背景を確認していきます。
私なら「安い」の横に、何の価格かも書きたい
日本と韓国のマンジャロ価格差を理解する鍵は、保険の対象、価格を決める仕組み、そして比較している数字の種類。日本の薬価が低いことと、旅行者がその価格で購入できることは、別の話です。
さらに、2.5mgは導入時の用量なので、4本分の金額がその後もずっと続くと考えるのは早計です。継続する治療の費用は、医師が判断する用量や診療内容によって変わります。
マンジャロは処方が必要な医薬品で、副作用もあります。価格の話は制度を知る入口として楽しみつつ、使用の適否は医師と相談する。私は、その距離感でこのニュースを読みたいです。

写真出典:韓国経済新聞「생글생글」『[Science] 비만은 왜 생기나?』(2008年5月9日)
今日の韓国語:お会計まわりの3単語
약(ヤク)=薬
가격(カギョク)=価格
보험(ポホム)=保険