「韓国では大学入試の日、飛行機の離着陸まで調整される」。そう聞くと、国中で息をひそめる一日なのかな、と想像しませんか? 実際には、試験の時間や会場に合わせて、騒音や朝の混雑を減らす対策が取られます。
特に大切なのが、英語のリスニングを外の音に邪魔されないこと。私も大事な試験の前は、いつもなら流せる小さな物音まで気になりました。「気合いで頑張って」で済ませず、集中できる環境を周囲も整える。この考え方には、受ける人の緊張をちゃんと見ている温かさを感じます。
今回は、韓国の大学入試「수능(スヌン)」の日に街が少し気を遣う理由と、受験生を応援する小さな習慣をのぞいてみましょう。

スヌンってどんな試験? 2026年は11月19日
スヌンは「大学修学能力試験」の略称で、大学入学の選抜に使われる全国的な試験です。日本の大学入学共通テストを思い浮かべるとイメージしやすいですが、科目や入試の仕組みまで同じではありません。
2026年の実施日は11月19日(木)。韓国の公式資料では、入学する年度に合わせて「2027学年度」の試験と呼ばれます。「今年の試験なのに来年の数字?」と、一瞬カレンダーを二度見しそうですね。
スヌンは、長く準備してきた勉強を形にする大きな節目。ただ、韓国の大学入試には学校の成績などを用いる選抜もあり、この一回だけですべての進路が決まるわけではありません。大切さを伝えるときも、「これで人生が決まる」とは言いたくないな、と思います。
飛行機まで調整するのは、英語のリスニングを守るため
英語のリスニングでは、音声を聞きながら問題を解きます。そこで飛行機の音や工事の音が重なったら、勉強してきた力とは別のところで、不利になってしまいますよね。外から入る音を減らす対策は、試験に集中する条件を守るためのものです。
2025年11月13日のスヌンでは、国土交通部が13時05分〜13時40分の35分間、航空機の離着陸を制限すると発表しました。これは英語のリスニングの前後5分も含む時間。飛行中の航空機には、地上から3キロ以上の高度で待機するよう求めています。

教室の中だけで静かにしても、外の大きな音までは止められない。だから航空や交通にも協力してもらう。その規模には驚きますが、理由を聞くと「そこまでやるんだ」が「確かに助かる」に変わります。
韓国教育部の2025年の支援案内でも、試験場周辺のバスや列車の徐行、クラクションの使用を控えること、工事や行事の音を抑えることが呼びかけられています。空だけでなく、街の音にも気を配るんですね。
ここで紹介した時刻や対策は2025年の実施例です。2026年の当日の交通・航空への対応は、その年の案内で確認が必要です。
出勤時間も動かす。朝は受験生の移動を優先
静けさともう一つセットになるのが、朝の交通対策です。会場までの道が混んでいたら、それだけで落ち着かなくなりそう。問題用紙を開く前に、渋滞との勝負をさせたくないですよね。
2025年の支援策には、官公庁や企業などの出勤時間を午前10時以降に調整すること、受験生が移動する時間帯の首都圏の地下鉄を増便することが含まれていました。会場の200メートル手前から車の出入りを規制する対策も示されています。
つまり、一日中すべての電車やお店が止まるという意味ではありません。必要な時間帯の混雑を減らしたり、会場の近くを静かにしたりする。私は、日常を少しずつ動かして受験生に場所を譲る、そのやり方が好きです。
お餅に込める「合格してね」の気持ち
受験生への応援には、食べ物を贈る習慣もあります。よく知られているのが、もち米のお餅「찹쌀떡(チャプサルトク)」や、伝統的な飴「엿(ヨッ)」。どちらも粘りがある食べ物です。
韓国語では「붙다」が「くっつく」だけでなく、試験に「受かる」という意味でも使われます。そこから、粘りのあるお菓子に合格の願いを重ねるんですね。お菓子をもらったからといって正解が増えるわけではないけれど、応援してくれる気持ちはきっと届きます。

私が試験前にうれしかったのは、大きな期待をかけられる言葉より、いつもどおりの食事や、温かい飲み物でした。「頑張らなきゃ」と思っていた気持ちが、少し落ち着いたんです。応援する側になった今も、相手を励ます言葉を増やすより、その日の負担をひとつ減らすことを大事にしています。
たくさん応援されると、うれしさと一緒に「期待に応えないと」という重さも感じました。試験を終えた日に、出来を聞く前に「おつかれさま」と言ってもらえて、ほっとしたことを覚えています。今年も、試験を終えた人にはまず、そのひと言を伝えるつもりです。結果の話は、本人が話したくなってからでいいと思います。
韓国旅行中にスヌン当日と重なったら
受験生でなくても、会場付近の案内に気づいたら、小さく協力できます。特別な作法を覚えるより、集中している誰かを邪魔しない、という感覚で大丈夫です。
- 学校の入口付近に立ち止まったり、撮影のために人を集めたりしない。
- 会場の近くでは大きな声や車のクラクションを控える。
- 朝の移動や飛行機を利用するなら、当日の交通・運航案内を確認する。
街を歩いているだけでは、普段との違いがあまりわからない場所もあるはず。それでも、すぐそこの教室で頑張っている人がいるかもしれない。そう考えて声を少し落とすのは、私にもできる応援だと思います。
今日のひとこと韓国語
수능(スヌン):韓国の大学修学能力試験
시험(シホム):試験
응원(ウンウォン):応援
합격(ハプキョク):合格
スヌンの日の静けさは、受験の重さだけではなく、「せめて外の音や混雑で困らせないように」という配慮の形。私は、努力してきた人を支えるなら、結果を急かすより、力を出せる場所をつくる側でいたいです。