韓国では、赤ちゃんが生まれて100日目を迎えると「백일(ペギル)」を祝います。白いお餅を並べたお膳や、小さな箱に入った「百日餅」を見たことがある人もいるかもしれません。
なぜ、1歳の誕生日より前にお祝いするの? それは、昔の人にとって、赤ちゃんが100日まで無事に育つことが大きな喜びだったから。今もその節目に、健やかな成長を願います。
日本にも、生後100日ごろの「お食い初め」がありますよね。同じころに赤ちゃんを祝う文化が、韓国ではどんな形になるのか。餅や飾りの違いを見ていくと、家族の願いまで見えてきます。
なぜ100日?「無事に育った」が大きな喜びだった
医療が今ほど発達していなかった時代は、生まれたばかりの子どもが亡くなることも多く、最初の時期を無事に過ごせたことが重要でした。韓国の「백일(百日)」の解説でも、そうした背景から赤ちゃんの成長を祝う風習が生まれたとされています。
さらに、伝統的な考え方では「百」は、完全さや「すべて」を表す縁起のよい数でもありました。100日という区切りには、ここまで育った喜びと、これからも元気でいてほしいという願いが重なっています。
これは文化の節目であって、100日目にすべての赤ちゃんの体が急に変わる、という話ではありません。でも私は、「まだ100日」ではなく「もう100日、一緒に過ごしたね」と喜ぶ感じが好きです。
わが子が百日を迎えた朝も、私は寝不足のまま抱っこをしていました。ふとカレンダーを見て「もう100日なんだ」と気づき、生まれた日の写真を開いたら、顔つきがずいぶん変わっていて。毎日は慌ただしかったけれど、ちゃんと一緒に100日を重ねてきたんだな、とじんとしました。赤ちゃんへの「おめでとう」と同じくらい、家族にも、自分にも「ここまでお疲れさま」と言いたくなった朝でした。

百日餅を配るのは、幸せもおすそ分けしたいから
ペギルでよく登場するのが「백설기(ペクソルギ)」。うるち米の粉を蒸して作る白い餅で、日本の伸びるお餅とは少し違う、ほろっとした食感です。白さには、清らかさや神聖さの意味が込められています。
赤茶色の小豆をまぶした丸い「수수팥떡(ススパットク)」にも、厄を遠ざけたいという昔の願いがあります。お膳のかわいさだけでなく、食べ物の色や素材にも理由があるんです。
こうした百日餅を親戚や近所の人に配り、赤ちゃんの成長を一緒に喜ぶ風習も続いてきました。「100人で白い餅を分けて食べると長生きする」という昔の言い伝えもありますが、今のお祝いで100人集めるミッションを背負う必要はありません。
百日餅を用意したときは、箱の飾りよりも、渡す相手の顔が先に浮かびました。祖父母や、赤ちゃんを気にかけてくれていた人たちに「無事に100日を迎えました」と小さな箱を渡すと、「大きくなったね」と喜んでくれて。そのひと言が、思っていた以上にうれしかったんです。家の中の慌ただしい毎日を、周りの人も一緒に見守ってくれていたんだな、と感じました。お餅を配る時間は、私にとって「ありがとう」を伝える時間でもありました。

ペギルと「トル」は、100日と1歳のお祝い
韓国の赤ちゃんのお祝いで、もうひとつ有名なのが「돌(トル)」。こちらは生後1年、最初の誕生日です。100日のペギルと1歳のトルは、同じ行事の別名ではありません。
トルには「돌잡이(トルジャビ)」という、赤ちゃんに本、お金、糸などを選んでもらい、将来や幸せを占うお楽しみがあります。本なら学問、お金なら豊かさ、糸なら長寿、といった願いを託すもの。ペギルの中心は、100日までの成長を喜び、元気に育つことを願うことです。
どちらにも餅やお膳が登場するので、写真だけだと似て見えることも。まずは「100日のお祝い? 1歳のお祝い?」と見ると、ぐっと分かりやすくなります。
昔の百日膳と今の百日膳、何が変わった?
昔は、出産や子どもの成長を守る神「三神(サムシン)」に白いご飯やわかめスープを供え、健康を祈る習慣がありました。お祝いの「백일상(ペギルサン/百日膳)」には餅や果物、米、白い糸などを並べ、糸に長寿の願いを託しました。
今は、その意味を受け継ぎながら、家族で食事をしたり、写真を残したりする形もあります。自宅用にお膳の小物や衣装を借りられるサービス、撮影用のスタジオもあり、伝統的な屏風のある飾り方から、白い布と花を使うシンプルなものまで選べます。
わが家の百日祝いは、白い餅と好きな花を飾って、自宅で写真を撮ることにしました。衣装もお膳も準備できたのに、いざ撮ろうとしたら、主役はぐっすり。大人は撮影モードでも、赤ちゃんはいつもどおりでした。起こすのもかわいそうで、まずは寝顔を一枚。きれいに目を開けた写真も欲しかったけれど、後で見返すと、あの気持ちよさそうな寝顔がいちばんお気に入りになりました。
準備中は、素敵な百日膳の写真を見るたびに、「うちも、もう少し飾ったほうがいいかな」と迷いました。気づけば、赤ちゃんを祝うことより、お膳をきれいに仕上げることに気持ちが向いていて。そこで飾りを少し減らし、準備や片づけも家族に手伝ってもらいました。おかげで当日は、自分も赤ちゃんの隣に座って笑えたんです。お祝いを一人で頑張りすぎなくてよかった。こういう日は、主役を世話する人にも、楽しむ余裕があってほしいと思います。

韓国のペギルと日本のお食い初めを比べると
日本のお食い初めは、生後100日ごろに「一生、食べ物に困らないように」と願う行事。赤飯や尾頭付きの鯛、お吸い物などの祝い膳を用意し、赤ちゃんに食べさせるまねをします。丈夫な歯を願う「歯固め」もよく知られています。

| 項目 | 韓国のペギル | 日本の お食い初め |
|---|---|---|
| 時期 | 生まれて100日目 | 生後100日ごろ |
| 中心にある願い | 無事に育った喜びと、健康・長寿・幸せ | 食べ物に困らないことと、健やかな成長 |
| 代表的な食べ物 | 白い百日餅などの餅 | 赤飯、鯛、お吸い物などの祝い膳 |
| 特徴的な習慣 | 餅を周囲に配り、祝福を分かち合う | 食べるまねや歯固めで願いを込める |
表は代表的な形で、料理や祝い方は地域や家庭で変わります。ペギルの餅は周囲の人と分けるもので、お食い初めも実際に料理を食べさせる行事ではありません。どちらも、100日のお祝いを離乳食の開始と結びつけて考える必要はないんですね。
韓国は餅、日本は祝い膳。それぞれ目を引くものは違うけれど、「ちゃんと育って、これからも幸せでいてね」という気持ちはよく似ています。わが家のお膳を前に「元気に育ってね」と願ったときのことを思うと、日本のお食い初めもぐっと近く感じます。形の違いを見ていたはずなのに、その奥にある親の気持ちはこんなに近い。そこが、この二つのお祝いを並べてみて好きになったところです。
100日は、家族の「うれしい」を形にする日
ペギルは、華やかなお膳を完成させるための日というより、赤ちゃんがここまで育った喜びを形にする日。昔の祈りが、今は家族写真や小さな餅の箱にもつながっていると思うと、ぐっと身近に感じませんか?
今も百日祝いの写真を見返すと、目が向くのはお膳より、赤ちゃんを囲んだ家族の表情です。少し眠そうな私と、衣装がずれたままの赤ちゃん。完璧な一枚ではないけれど、「あの日、みんなで100日を喜んだんだな」と思い出せる、大切な写真になりました。百日祝いは、赤ちゃんの成長だけでなく、家族が重ねた100日をねぎらう時間でもあった。白い餅ひとつから、そんな気持ちまで分け合えるところが、私は好きです。
今日の韓国語
백일(ペギル):赤ちゃんの生後100日のお祝い
떡(トク):韓国の餅
돌(トル):1歳の誕生日
아기(アギ):赤ちゃん